実家に帰って、両親が亡くなって、色んな手続きがだいたい終わって、家の整理もあらかた済んで、裏庭の方も必死で草刈りしなくていい程度まで手を入れて、やっとある程度日常と呼べるような生活になったのはここ数年ってとこかな。
で、多少落ち着いたので、気が向いた折々に実家に今でも残っている昔の雑誌なんかをぱらぱらするのが結構楽しい。
中でも思春期の頃に読んでいたレシピ本は、あの頃の夢が思い出されて、とても楽しい。
自分で、ケーキやクッキーを作る事が出来ると知った時の驚き。本の写真のそれまで見た事も聞いたこともないようなお菓子が、ただ見るだけじゃなしに実際に作れるなんて夢みたいすぎる!
ザッハトルテというドイツのチョコレートのお菓子があるらしいとか、プチ・フールというのは色々な小さなケーキの事だとか、あんずジャムと言うジャムがあってそれはパウンドケーキの仕上げで使うらしい。
と、懐かしい気持ちで眺めているうちに、いっちょこれを作るかーと思い立って、さっそくやり始めたら、途中でげっ、となった。
読みながら順番に作って行くと段取りがとても悪いのだ。
あーそうだった、レシピ本ってそんなんだった、と、再び当時の事を思い出した。
レシピ本に限らないんじゃないかと、あの頃の料理番組でよくあった「あらかじめ用意しておきました○○を加え」ってフレーズも思い出した。
あらかじめ、が順番の途中に割り込んでくるので、読みながら順番に作って行くとてんやわんやになってしまうので、当時の私は、本を見ながら何かを作ろうと思うと、まず本を熟読して、段取りをシミュレートした上で、必要な材料と道具を全て使う順番に並べてから取り掛かるようにしていた。
当時は、レシピ本とはそんなものなのだと思って、本を読んで何かを作る時は必ずそうしていた。
最近のネットで紹介されるレシピは、例えばオーブンを予熱する場合でも、どんなタイミングで余熱を始めるのが好ましいのか、みたいな事も明記している上に、動画まである。
昔は情報の非対称がすごかったから、こっちが本に合わせに行くしかなかったんだけど、今は簡単に調べられる上に、比較もしやすい。
昔のレシピ本には、これ文章書いたのは作った人じゃなかったんだろうな、と思える記述も沢山あって、ひでえなあと思いつつも、それが通用するようなのんびりした時代だったんだよな、とも思う。